暮雪餅→BOTAN

花屋のBOTAN/加藤くんとの出会いは、函館山ロープウェーの麓にあるサクセンカイギ社で『拝啓、常盤坂の家を買いました』のブログ立ち上げの打ち合わせをしている時だった。そこにはセンス良く植物が置かれてあり、その管理をしていた。その後、リノベーションが始まり溢れ出す解体材いりませんか?と投げかけたFBで、来た中の一人だった。いい味に錆び付いた亜鉛引きのトタンや、塗膜の剥がれた板などを選んで行った。
BOTANアトリエ
それから、たまに様子を見に寄ってくれた時に、自分も古い家を買ってそこにアトリエを持ちたいと語ってくれた。たまたまいい暮雪餅の情報がありその話をすると、とても興味を持っていた。情報元の函館市役所まちづくり景観課の宮本さんに話しをすると近々、暮雪餅の建物を引き継いだ息子さんが来られるということになり、タイミングよく見せてもらえることになった。
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建てつけの悪いアルミの戸と中のカーテンを開けると、中には天井の高い18畳ほどの土間が広がっていた。暮雪餅と書かれた木の箱や、蒸篭(セイロ)、大きな銅の釜や臼、水ガメなど餅屋の道具が所狭しと置かれていた。土間の向こうの引き戸を開けると、今の今まで生活していたように、居間と台所には生活道具一式がそのままに置かれていた。相続した息子さんは、なかなか遺品に手をつけてこれなかったようだった。居間の隣の和室の床は抜け落ち、お風呂の前の脱衣場の床も抜けていた。2階からは屋根裏収納もあった。小さな車庫には目一杯の荷物が詰まり奥まで見通せない。状況だけを見ればとてもいいとは思えない。ただ、煤けた梁が見える天井の高い土間や、居間に続く動線、2階も十分な広さがあり、車庫付きであり、配達の多い花屋として交通の便の良さなど条件はとても良かった。何より外観の佇まいが加藤くんはとても気に入った。
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早速、所有者に相談すると、建物だけ売って土地は借地としたいと言われ、その夜に加藤くんから会食に誘うも体調不良により叶わなかった。やはり、自分で手を掛ける以上、土地も建物も自分のものとして始めたいもの。交渉するも平行線のまま時が経った。ある時、近隣から解体して駐車場にしたいと持ち主に相談があったようで、再度の家族会議の末に決心がついたようで最初に交渉のあった加藤くんに建物を活かした上での売買という話しになった。ここから、箱バル不動産の蒲生商事に仲介に入ってもらい、残置物などの交渉などもまとめてもらい、2015年10月末ようやく引き渡しとなった。
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餅屋から花屋へ。リノベーションに当たって、これまで解体の仕事経験もある加藤くんは出来る部分はお金を掛けずに自分でやりたいとなった。普通であれば、私が設計をして工務店で見積もりをして工事が始まるのだが、自分で出来る部分をやり、その他は掛かった分の全てを個別に支払っていく分離発注方式で進めた。リスクと手間が掛かるが、その分の経費を浮かすことができる。着工と共に大工さんが入るのではなく、自ら解体をしゴミをハイエースに積み込み、函館市のゴミ処理場に持って行く。私も加勢し、友人の〇〇くん、蒲生くんも手伝いユニットバスや、キッチン、トイレ、土壁や天井、腐った床や大引など次々に解体してはゴミの運び出す日々が続いた。
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スケルトンに近くなった状態でようやく大工さん2人がやってきた。解体というマイナスの作業から、新たに築いていくプラスの作業は、加藤くんのモチベーションも高めてくれた。大工さんは床の基礎となる束石を入れ、腐った土台を入れ替え大引をかけ、段取り良く床を組んでいく。新聞古紙の断熱材を入れ、床には地元道南杉の38ミリもある分厚い床を敷いていった。床を敷いたら傷や汚れが付かないように養生するのが当たり前だけど、ここではこのまま土足で、工事中の傷をあえて刻み込みエイジングし、最後に洗ってWAX掛けすることにした。最初は申し訳ないように皆上がりたがらない。使っていくうちに段々いい味わいが出てきた。
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天井は元のままを使う予定だったが、天井裏にチラリと見えた太鼓梁を大層気に入り、予定になかった小屋組表しの勾配天井を組むことになった。コストとニラメッコしながら、天窓を入れたり、もらってきたガラス戸を嵌め込んだり、即興で目まぐるしく現場の進行が変わっていく。手間は掛かるばかり、どんどん自分が大変になっていくのだが、いばらの道を突き進む。そこにBOTAN/加藤という人間性を垣間見た。
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メインとなる玄関のドアも面白い。たまたまBOTANの旧来のアトリエに行った際、その建物の木製サッシやドアが腐っていたので、全て取り替えていた。その工事の人に、このドア捨てるの?って聞いたら捨てると。え!?と舞い降りた奇跡。じゃくださいって有りったけもらい、それを建具屋さんに腐ったとこを切って継いで張り直して、、、それで浮いたお金でまた大工さんお願いして。
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そんなBOTANのリノベーションも壁まで張った段階で大工さんのお助けポイントも無くなり、ここから残った工事は自分の力で進めて行く。壁にパテを塗ったり、床を塗装したり、家具を作ったり、棚をつけたり、、、店の引越しが終わっても古き建物に住み続けるにはコーキングを打ち換えたり、ペンキを塗り替えたり定期的に手が掛かるかる。BOTAN/加藤くんの挑戦は今後も続いてゆく。そして4月3日はその過程の一コマをオープンハウスする事になりました。旧暮雪餅の建物に刻まれたBOTANの姿を是非見に来てください。
箱バル不動産 富樫雅行
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