穴場の穴間

「今日は沖合でサメが出ています、海での遊泳は控えましょう」
僕の中学校時の夏のアナウンスです。
海なし県の栃木県から引っ越してきた僕としては
夏休みの遊びは驚きの連続でした。

僕の引っ越してきた函館の西部地区には
西中学校と潮見中学校があり、
僕の通っていた西中学校の生徒たちは
もっぱら穴間海岸が夏の遊び場でした。
函館山の観光地区から真裏に位置するこの海辺は
岩がゴロゴロとした海岸で、山側は断崖、波で削られたなかなかワイルドな
出で立ちで、グーニーズやスタンド・バイ・ミーを見た少年たちにとっては
格好の冒険スポットなのです。
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初めて友達に連れられて行った時は少し怖かった印象があります。
僕らは短い北の夏を、飛び込み、潜水、捕獲、
からのキャンプファイヤー、バーベキューを飽きもせず毎日してました。

家から料理酒や醤油、塩やコショウの調味料、工具や海パン、釣竿、水中眼鏡を
リュックに詰め込み、午前中から夕暮れまで遊び倒す。
地元の漁師の友達は魚を潜って獲り、ウニやアワビをマイナスドライバーや軍手で捕獲して
(もちろん地元の漁師のお父さんたちの了承のもと)
流木を拾い、火をつけて網の上にウニの口を開き、酒と醤油で適当に味付けして
魚やアワビものせて焼く。
お腹一杯になるわけではないけど、自分たちで全部やってのけた感に
夕焼けも相まって、中学生ながら悦に入り、好きな女の子の話とかしちゃうわけです(笑)。
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穴間の海は陸から5メートルぐらいは海藻が繁茂していて
割と腰ぐらいまでの水深なのですが、
そこを越えると、ガクンと深くなり、3〜5メートルぐらいになって
サーっと水温が下がり、少し怖くなります。
遠くの方が深いブルーになっていて、吸い込まれそうになり
なんだかさっき聞いたサメのアナウンスを急に思い出したり。

自転車で家に帰る頃には暗くなり、外人墓地を抜けて帰る道を
怪談話をしながら帰るのはなかなかのスリルでした。
また、外人墓地で帰るルートではなく、
地元の方たちが多く暮らす細い道のもうひとつのルートも
生活音や甲子園の中継の音、洗濯物が干されていたり、
夕飯時の匂いなど、少しホッとするような、懐かしいにおいのする道で
個人的にはとても好きな場所です。

大人になってからは子供を連れて水際でチャプチャプする程度となり
シュノーケルをつけて潜っている中高生をまぶしい目で眺めています。
それでも岩場にいるカニや流木を拾ったり、小魚を網で捕まえたり、
小さな子供と行っても楽しめる穴間海岸は夏の函館の観光地としてだけではない、
どちらかといえば地元に暮らす人々のまさに穴場、なんだと思います。
箱バル不動産 苧坂淳
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