2015年10月某日。 昨晩は、変な月が出てたと後になって聞いた話。
そういうのもあるのか、訳の分からない衝動に駆られて 不動産物件のネットサーフィンをし続けて朝になった。
その呪縛から逃れたくて、朝ご飯が終わってちょっとした隙間の時間に
自転車で物件外観ツアー(注:外から建物を眺めて楽しむこと。趣味です。)に出掛けた。
そしたら以前から気になってはいるけど人が住んでいないと思っていた建物の中から、
爆音の歌謡曲が聞こえる。しかも結構好きなやつ。
アレレ?? 玄関のドアが少し開いてる・・・・。
「こんにちわー!!」
って意を決して入ってみた(笑)
そしたらアインシュタインみたいなおじいちゃんでてきたー!
事情を話すと、家の中を見せてくれると上げてくれた。
2階にすんごい大きいスピーカーから高橋真理子が爆音でかかってた。
昔歯医者さんだったらしく、見た事のないカッコいい診察台が置いてある。
初期の工業製品は本当にオブジェだ。
天井が高くて、漆喰で飾りが施してある。
ドアノブも階段の手すりも全て真鍮。
完全に一目惚れ。
「おじいちゃん、ココ貸してくれませんか?」
「貸すも何も、あげるよ。」 ・・・・(え???)
すごい展開・・・
さらに甥っ子さんが関東から来函する日だったらしく、 お会いして挨拶することが出来た。
おじいちゃんが事情はなしてくれて、 「いいね~!」 って甥っ子さんも即了承。
またまたすごい展開・・・。
大興奮しながらもおじいちゃんの電話番号だけ聞いて、一先ず帰宅。
主人(天然酵母パンtomboloを営む箱バルメンバー:苧坂淳)に
さっき起こった出会いを話すと、
「落ち着いて、対応しなさい。」
と釘をさされる・・・。
確かに、今までもったいない出会いもあった。
なぜ今回はおじいちゃんと仲良くなれたのか?
なぜ今までの出会いはもったいない結果になったのか?
考えた結果、おじいちゃんとお茶のみ友達になってもっと話を聞きたいと思った。
その日の午後、パン屋の仕事が落ち着いたころに
私のZIGZAG社の名刺と箱バル不動産の名刺と主人のパンを渡して私の連絡先を交換した。
本当に朝は飛び出して何にも持っていなかったので(パジャマだったし(笑)
身なりもきれいにして改めて挨拶。
「また来ますー!」と一言。心にも誓う。
その翌日、気になってもう一度おじいちゃんちをゆっくり見せてほしいと、
電話をして行こうとした途中に、仲良しでご近所のカフェPazarBazarの朋佳ちゃんとこうらいくんに出会う。
いきさつを話すと、「一緒に行きたい!」とのことで、同行。
おじいちゃんは快く3人を上げてくれて、超でっかいスピーカーで音楽を聞かせてくれた。
朋佳ちゃんはおじいちゃんちにたいそう感銘して、写真をいっぱい撮ってた(笑)(もちろん了承の上)
おじいちゃんから聞いた話の中で、「戦争中の電球の話」がとても印象的だった。
戦争中、空襲が来ると電気を消さないといけない。
だけど、その当時の電球は少しソケットから緩めるとその分灯りが小さくなる。
この建物と同じように、激動の時代を生き抜いてきたおじいちゃんだから語れる、歴史なんだなあ・・・。
それから時々、おじいちゃんのスピーカーで音楽を聞かせてもらった。
おじいちゃんは若いころ、歯医者さんにはならずに、電気修理やさんになった。
音楽好きから転じたのかもしれない。
そしておじいちゃんの趣味の真空管アンプとスピーカーは70~80年代の音楽が 最高に相性がいい!
「音楽は主人のほうが詳しいんです。」
というと、おじいちゃんが
「スピーカーいらないかい?」
と聞いてきた。
かなり高そうなビンテージ品なので値段など具体的な話はせずその日は帰ってきた。
その数日後、アポイントを取って主人と一緒におじいちゃんの家に行った。
主人もたいそう感銘を受けていた。
スピーカーや真空管アンプにも興味津々で、おじいちゃんのCDを色々聞かせてもらった。
おじいちゃんがAKBのコジハル推しだということや、高橋真理子・桂銀淑・ZARDが好きなど。
もうおじいちゃんはレコードを聞かないからと言って、たくさんレコードをくれた。
うちはレコードしか聞けないので凄く嬉しかったし、好きなレコードもたくさん入っていた。
そしたらおじいちゃんが、
「このスピーカー、旦那さんいらないかい?」
と、この時もまたきっと高価だろうからと思って値段は聞けず・・・。
そこで「次回、箱バルメンバーもおじいちゃんちに呼んでも良いですか?」
と聞いてみた。
おじいちゃんに出会ってからここまで、ずっと「箱バル不動産」の話はしていたけれど、
どこまで理解されているかは不確かだった。なにせ、まだまだ地名度もなく実績も無い。
だけど、蒲生君(箱バルメンバーの宅建主任:蒲生寛之)と富樫さん(箱バルメンバーの1級建築士:富樫雅行)
に早くおじいちゃんちをみてもらいたいなあと思って、
思い切って聞いてみた。 そしたらすんなり了承してくれた。
みんなで急いでスケジュール合わせて、おじいちゃんち内覧会に行った。
富樫さんは前々からずっと入ってみたいなと思っていたらしい。
蒲生君はドアノブや階段の手すりがALL真鍮なのに大興奮!
富樫さんは内装の壁が漆喰であることや歯医者さんと自宅だったために出来た
面白い間取りを記録の為にずっと撮影していた。
蒲生君も音楽好きなので、音響の話になり、
今度蒲生君ちのアンティークのステレオを見てもらうことになった。
富樫さんの見解によると、天井と壁の漆喰の亀裂が心配なので、
今度、屋根裏を含め建物の調査に入らせてもらう事を約束して、
みんなでtomboloに帰る。
ようやくおじいちゃんちの感動をみんなで共有できて、
函館の眠れる「箱」の潜在能力に、箱バルとしての活動意義を再確認した日でした。
出会ってから約1ヶ月。
おじいちゃんと気軽に話が出来るようになってきた。
具体的に計画を立てて、おじいちゃんに年内の引渡しは可能か相談してみた。
凄く前向きに考えてくれて、親族の方や不動産鑑定士さん、司法書士さん、税理士さんにも相談してくれた結果、
譲渡の方向で動こうと言う話になった。
それからあのスピーカーも主人に譲ってくれるとのこと!
これからもあの建物の顔として、活躍してもらおうと思っています!
契約の話と平行して、おじいちゃんに蒲生君はステレオを直して貰って、大感動!
今までラジオしか聞けなかったのに、TVの音もCDもレコードも聞けるようになって、
かっこいいスイッチまで付いて、おじいちゃんすげーーー!
富樫さんは改めて天井裏に蒲生君と入って天井や屋根の状態の調査。
おじいちゃんのお父さんが家を建てるときに貼ったお札が見つかり、
今度はおじいちゃんが大感動!!
天井の修理の作業は是非、おじいちゃんも手伝いたいとの事。
かなりの一体感が生まれました。
この建物は土地が借地の為、何かと権利関係が複雑でしたが、
おじいちゃんが協力してくれたり、蒲生商事(蒲生君の勤務する不動産会社)に相談したり、
少しずつ前進し、地主さんのご理解もあって、先日譲渡が成立した。
結果的に、おじいちゃんは建物の解体費用をかけずに済み、地主さんは次の借主が見つかり、
私は好きな建物を守れることになった。
旧安藤歯科医院として80年を経たこの建物の2代目という意味も込めた、
「An deux HOUSE」という名前を付けました。
ここから沢山の交流が生まれ、建物も街も人もつながっていくカタチを作っていきたいと思っています。
いよいよ箱バル不動産アジト計画、始まります!